制裁が自立を加速させた——中国半導体メーカー、AI需要で過去最高売上

この記事のポイント

「制裁で中国のAI開発を止められる」という前提が揺らいでいる。

CNBCが4月3日に報じたデータによると、中国の主要半導体企業が2025年度に軒並み過去最高の売上を記録した。NVIDIAチップの対中輸出を締め付けた米国の規制措置が、意図に反して中国国内メーカーへの需要を押し上げた構図だ。


数字が示す急成長の実態

中国最大のファウンドリ(受託製造)であるSMIC(中芯国際集成電路製造)は、2025年度の売上が93億ドルに達した。前年比16%増という成長率は、グローバル半導体市場の平均を大きく上回る。

より際立つのはGPUメーカーのMoore Threads(摩爾線程)だ。同社の売上は前年比231〜247%増を記録した。絶対額は非公開だが、成長率だけ見れば異常な数字と言っていい。AI推論・学習向けのアクセラレータ需要が一気に花開いた格好だ。

これ以外にも、AI向けチップを手掛けるCambricon(寒武紀科技)やHuaweiのHiSilicon部門も好業績が伝えられており、業界全体としてのトレンドが浮かびあがる。


なぜ制裁が「追い風」になったのか

ここで腑に落ちない点がある。米国はなぜわざわざ規制したのに、中国の半導体産業が成長しているのか。

構造を整理すると、こうなる。

NVIDIAのH100やA100は今も対中輸出が制限されている。中国のAI企業はクラウドやデータセンター向けに大量のGPUを必要としているが、最高性能の外国製チップを手に入れられない。その需要がそのまま国内メーカーに向かった。規制が「競合排除」ではなく「顧客の囲い込み」として機能した。

Benzingaは「export curbs are fueling China's chip boom(輸出規制が中国の半導体ブームに火をつけている)」と直接的な表現で報じた。制裁を設計した側が期待したのとは逆方向の結果になっている。

もっとも、これは短期的な話だけではない。中国政府は2023年以降、半導体国産化への補助金投入を大幅に増やしており、Moore Threadsのような新興メーカーが育つ土台が整えられてきた。規制による需要の急増は、その土台の上で起きた加速だ。


先端ノードでの差は縮まっていない

ただし、数字だけで「中国の半導体産業がTSMCやIntelに追いついた」と見るのは早計だ。

先端プロセス技術では差が依然として大きい。TSMCはすでに2nm以下の量産に向けた開発を進めているが、SMICは7nmノードの量産に注力している段階だ。最先端ロジック半導体の分野では少なくとも数世代の開きがあり、この差を埋めるには露光装置(EUV)の調達問題も絡んでくる。

SMICは今期の急成長を「成熟ノードへの旺盛な需要」と説明している。28nm以上の成熟プロセスは、AI向けの演算チップというよりも、家電・自動車・産業機器向けに幅広く使われる領域だ。そこでのシェア拡大が売上を押し上げた側面が大きい。

AI加速器の分野では、Moore ThreadsやHuaweiのAscendチップがNVIDIAの代替として実際に使われ始めているが、性能・エコシステムの両面でまだ差はある。差があると分かったうえで使わざるをえないという現実が、中国国内のAI開発者の実情だ。


「逆効果」という評価の妥当性

この状況を「米国の輸出規制は逆効果だった」と断言するのは難しい。

一方では、確かに中国国内半導体産業の成長を促した。制裁がなければ、中国のAI企業はNVIDIAに頼り続けていただろう。強制的な置き換えが国内エコシステムの立ち上げを速めた。

他方で、最先端チップへのアクセスを遮断するという本来の目的については、一定の効果が出ているとも言える。仮にNVIDIAのH100が無制限に輸入できていれば、中国のAI研究機関がどこまで速く進んでいたかは分からない。

どちらが「真実」というより、両方が同時に起きている。規制の設計者が意図しなかった副作用として「国産化の加速」があり、その副作用がいまや本体と同じくらいの重みを持ち始めている。


この先に何が待っているか

今後の焦点は、Moore ThreadsやHuaweiのAscendが「NVIDIA不要」と言えるレベルに到達できるかだ。性能が並ぶのか、あるいはTSMCの先端技術なしにはそこまで届かないのか。

SMICが成熟ノードで稼いだキャッシュを先端ノードの開発に再投資する動きも続いている。短期の売上急増が長期の技術力につながるかどうかが、この「逆説的構造」の最終的な評価を決める。

制裁が産業を止めるのか、育てるのか。中国半導体の数字は、その答えがどちらかだと単純には決まらないことを示している。


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